ブロードウェイ公演 00年・02年キャストの応援
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作品紹介・各場面詳細〜第1幕〜
『太平洋序曲〜Pacific 0vertures〜』


このページでは、新国立劇場小劇場で2002年10月11日〜31日に再演され舞台に基づいて、
各場面の詳しい説明をしています。
記憶の限り書きましたが、勘違い、未確認の点があると思います。どうぞ、お許し下さい。

プログラムに載っている場割りでは大きすぎる場合、私が更に細分化しています。
この便宜上の場割りは香盤表とあわせています。
「ちょっとコメント」の欄に2000年10月の東京初演、2002年7月、8月のアメリカ公演での変更点も
わかる限り書いています。なお、東京初演で坂本朗さんが担当なさった阿部役は、アメリカ公演、
東京再演では樋浦勉さんが担当されました。

敬称は略させて頂きます。
特に役名が付いていなくて舞台に登場なさる場合は文中に直接キャストのお名前を書いています。


第1幕

第1場19世紀の日本の縮図

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 香山 本田修司 たまて 春芳
(将軍)
万次郎
小鈴まさ記 阿部 樋浦勉 老中 越智則英
大島宇三郎
将軍の母 佐山陽規 剣士 園岡新太郎
商人 治田敦
将軍の妻 堂ノ脇恭子 百姓 広田勇二(篭かき)
斎藤桐人
神主・侍 村上勧次朗
鍛冶屋 さけもとあきら 大名 岡田誠 原慎一郎
百姓娘 山田麻由
粟田麗
   
ミュージカル
ナンバー
太平の浮き島(国本武春・全員)
1−1−1
オープニング
本田と春芳が両袖から舞台後方中央へ登場する。春芳の「過去へと〜〜」の声に促されるように、黒服を着たキャストが両袖から二人ずつ登場する。さけもと、山田、斎藤、粟田、原、広田、治田、国本、岡田、村上(大体登場順)が舞台に揃うが、皆いろいろな方向を向いている。まるでどこか遠い場所、過ぎ去りし時に思いを馳せる目をしているようだ。舞台奥中央格子戸の中に据え付けられた大太鼓を小鈴が打つ。その太鼓の音に応じるように、キャストは正面を向き、正座をする。

1−1−2
日本の社会制度
太鼓に赤い照明があたり日の丸を思わせる。ナレーターが「日本、浮ぶ帝国」と叫ぶ。日本が鎖国した理由を述べ、引き続き1853年のペリー来航の事件を示唆する。ナレーターが裃のような衣装を着ようとすると、音楽が始まる。この時代の他の国のことも織り交ぜつつ、この事件より前の平和な日本が「太平の浮き島」のナンバーにのって紹介される。シンプルな黒の衣装のキャストが太極拳を思わせる不思議な動きの踊りを踊る。江戸時代の絵が描かれている屏風が並べられ、その中にキャストが吸い込まれる。屏風を原、山田、粟田が回す。その屏風絵の中から登場したような和装ののキャストが登場してくる。
剣士がナレーターより歌を引き継ぐ。それに阿部と老中らが和していく。将軍の母と妻も加わり、海の向こうで機械が発明され、血を流し民主主義を勝ち取ろうとしている、しかし海に浮ぶ日本は太平であり、我ら日本人は米作りに励むのであると歌う。
米中心の経済社会が紹介される。百姓が耕し、米を収穫する。収穫時には百姓娘は田にしめ縄を張り、神主が田を清める。武士がその米を取り立てる。武士は商人にその米を渡して金を受け取る。鍛冶屋が作った刀を武士が金で買う。鍛冶屋は米を商人から買う。金を操る商人が高らかに笑う。
香山とたまてが登場し、米を食べて生活している日本人を代表するように幸せそうな様子を見せる。
次に身分制度が紹介される。大名に対して頭を下げるのは、商人、農民、鍛冶屋らである。滅多に顔を見せない将軍はこのときも篭かきに顔を覆われて登場するが、大名も老中も頭を下げる。そして天皇に対しては、将軍の母も妻も深々と頭を下げる。しかし、その天皇はまだ一歳。
「太平の浮き島」のナンバーは金扇をもっての舞いにあわせて、花を愛で、俳句を作り、茶をたて、という日本の美しい文化を歌う。キャストが少しずつ舞台から去り、最後に残ったナレーターの「われらは浮ぶ」の台詞で「太平の浮き島」のナンバーは終わる。
このナンバーの終わりのあたりに、香山とたまてが登場し、川に見立てた上手前方のプールで釣りを始める。

1−1−3
万次郎の取り調べ
ナレーターは「噂話」の小話をする。そして大抵の噂はすぐに消えてしまうものだがこの噂は違っていたと。ナレーターの説明中、上手後方から万次郎が二人の侍によって荒々しく舞台に連れ出される。
舞台後方の戸板が開くと、将軍の母、阿部、老中らが登場し、何やら話をしている。将軍の座があいている。ナレーターは「将軍がいませんよ。」と騒ぐが将軍の母らは全く関心を示さない。「お出ましになるには日が悪かったのでしょう。」とナレーターも諦める。そして、ジョン万次郎がアメリカから帰国していた。万次郎の服装が島のTシャツにズボンである。将軍の母らのとんちんかんな疑問が幕府の外国に対する知識のなさを露呈していた。万次郎の帰国は鎖国令を破る行為で、死罪にあたる。万次郎は死罪となることも覚悟で帰国した理由は、「アメリカが日本に開国を迫る、という噂を聞いた。」からだと話す。驚いた将軍の母と老中らは、下級武士の香山に全てを任せようと考える。

1−1−4
香山の昇進
香山と妻たまては、川に見立てた舞台前方下手縁でプールで、魚釣りをしていた。そこは幕府直轄の川なので、禁猟だったのである。香山を探しに来た侍達に許しを乞うたまてであるが、侍達は全く取り合わない。香山はたまてに家で待つように言い含める。
覚悟を決めて阿部と老中らの前に出た香山は、意外な昇進の話を聞き、ほっとするが、昇進と引き換えに、アメリカとの交渉をしなければならない事を知り、愕然とする。「たなぼたのうまい話しには裏がある」ということだ。
ちょっとコメント 東京初演時は、原慎一郎さんの役を今拓哉さんが演じられました。



第2場 香山の家

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
香山 本田修司 たまて 春芳 ワキ 広田勇二
岡田誠
ミュージカル
ナンバー
帰り待つ鳥(広田勇司・岡田誠)
1−2 舞台上手に照明によって作られた道を香山は難しい顔をして家へと向かっていた。舞台前方下手に据え付けられた玄関。夫香山の無事な帰宅にほっとし、満面の笑顔で迎える。そして、昇進の話を聞き、さらに喜ぶのだった。しかし、アメリカとの交渉をしなければならないと知り、驚く。アメリカは来ないかもしれないと、たまては言う。しかし、香山はそれを遮り、自分がしくじったときの覚悟は出来ているかたまてに問い詰める。たまての返事はないが、半鐘が鳴り響く。アメリカが来たのだ。覚悟を決め、外出の準備をする香山。そして、それを気丈に手伝うたまて。その二人の心象をワキが切なく美しく歌う。
小鳥は飛び立つ。失くした日々を思うと悲しい。ほかな道はないのだろうか?嵐がやって来た。
やはり夫を行かせたくない。刀を渡すまいとするたまて。香山はたまてから奪い取る。ほかに道はないのだ・・・
火打石を叩き、香山の出発を気丈に見届けたたまてではあるが、悲しみを踊りに託す。そして、覚悟を確かめるように懐剣を抜く。すべてを見ていたワキの二人は白い着物をたまてに掛ける。
ちょっとコメント 東京初演時は、岡田誠さんの役を今拓哉さんが演じられました。
東京初演時は、たまてがこの場面で自害してしまいました。


第3場 海辺

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 漁師 さけもとあきら 泥棒 園岡新太郎
祖母(母) 大島宇三郎 商人 岡田誠 息子 山田麻由
火消し 佐山陽規 商人 治田敦 坊主 越智則英
飛脚・家臣 村上勧次朗 百姓 小鈴まさ記
斎藤桐人
魚屋 本田修司
武士 原慎一郎
樋浦勉
長屋女房 堂ノ脇恭子
春芳
子守 粟田麗
ミュージカル
ナンバー
黒い竜が四匹(さけもとあきら・園岡新太郎・アンサンブル)
1−3−1
発見
火の見櫓の鐘が激しく鳴り、漁師がオーケストラ・ピットのワキからはしごを降りながら、「朝早くに海で網を張っていたら・・・」と歌う。上手バルコニーに小鈴、斎藤、本田が登場しあくびや伸びをのんびりとしているが、海に船を見つけて大騒ぎになる。この3人もはしごを降りる。舞台に下りた漁師は「黒い竜が四匹来た。」と驚き歌う。商人(治田)もやってきて不安そうに海を見ている。そして、逃げていく。

やや下手に隙間を作りに舞台後方戸板が立ち並べられる。その隙間から人々が逃げ惑うさまが見えている。

1−3−2
孔子の教え
戸板の間から逃げ惑う人々の様子が見えている。
その人々のうちの一人・・・大きな荷物を抱えきれないほど持った商人(岡田)がやってきた。息子と年老いた母(大島)が一緒である。母はもうこれ以上は歩けない、毛唐の手篭めになったほうがましだとまでいう。商人は荷物を手放したくないので、母の世話を幼い自分の息子にさせようとする。しかし、息子は母を背負い損ね、大騒ぎになる。商人は母に「歩いて下さい」と言い放つ。冷たい商人にナレーターは孔子の教えを伝える。「商人が母を運ぶための籠を息子に頼むと籠が二つ用意された。なぜ二つなのかと息子に聞くと、一つは祖母のため、もう一つは将来の父のため、と答えた、と。」商人は親不孝を恥、荷物を息子に頼み、母を背負って逃げていった。

1−3−3
大混乱
舞台上手に立ち並んだ戸板の後ろから泥棒が出てくる。一仕事してきたのである。しかし、海に浮ぶ黒い竜をみて「ありゃなんだ〜〜〜」と驚き歌う。
漁師、火消し、百姓(斎藤)、商人町が加わり、歌う。
ナレーターが長屋の女房たちや子守はお寺に集まり祈る様子や、武士が馬で逃げ騒ぐ様子を歌い、さの様子が演じられる。

1−3−4
戸板バンバン
漁師と泥棒が「四匹の竜が火を噴いている」と歌う。
5枚の戸板が持ち出されそに隠れるように人々は逃げていく。その戸板を舞台に打ちつける音と、力強く歌い上げられていく歌とが合わさり大混乱の様子が表現されていく。まさに「世の終わり」なのだ。
怯え、震えながら戸板に身を隠しているような大混乱の町の中で、冷静に振舞っているのが泥棒(園岡)である。「俺が盗まなければ、アメリカが持って行く」と言って、商人(岡田)が腰にぶら下げていた財布をまんまと盗む。しかし、逃げようとして武士(樋浦)にぶつかり、その家臣の侍(村上)に切りつけられてしまう。その切り口を舞台前方の水の中につけると、水が真っ赤に染まる。
そして、劇場の天井には巨大な星条旗が現れる。
戸板が斜め倒れていき、しめ縄がきれる。まさに地獄!
ちょっとコメント 東京初演時は、原慎一郎さんの役を今拓哉さんが演じられました。
アメリカ公演では、原慎一郎さんの役を石川剛さんが演じられました。


第4場米国船ポーハタン号

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 香山 本田修司 万次郎 小鈴まさ記
老中 越智則英
大島宇三郎
士官 広田勇二・原慎一郎
治田敦・樋浦勉
役人 村上勘次朗
1−4−1
ペリー来航
劇場の天井を覆う巨大な星条旗とともに、ペリーの部下の士官らが花道に現われる。
ナレーターのアメリカ人の見た目の怖さをいろいろ言う。ナレーターの言うとおり、花道に立ちはだかるアメリカ人は、もじゃもじゃの髪、天狗のような鼻、鷲のような目の仮面をかぶっている。そして「日本の危機を救うのは誰だ?」と叫ぶナレーターに応えるように香山が現れる。裃袴と正装ではあるが、海上の黒船に向かう香山は単身、そして吹けば飛ぶような小舟に乗っているだけなのだ。

1−4−2
交渉
士官らは、香山と口もきかずに追い返そうとする。何とか話を聞いてもらい、鎖国令があるので速やかに退去するよう伝える。しかし、士官たち(広田・原が台詞を担当)ははもっと身分の上の者と話したいのだと、香山を一蹴する。
香山が去っていく後姿を見ながら、士官らは小ばかにしたような高笑いをする。それを聞いた香山は「なぜ笑うんだ?俺は笑わない。」と誇らしげに言う。

1−4−3
作戦会議
香山は、戸板をたたく。すると小窓があいて老中らが顔を出す。「偉い人をつれて来い」と言われた報告する。老中らは自分たちがその偉い人であることはわかっているが行きたくはない。それを察した香山はアメリカ帰りの万次郎の噂を聞いているので、もし生きているなら彼を偉い人に仕立て上げて交渉したいと提案する。老中らは、万次郎の存在を否定する。要求が受け入れられないので、香山も「では、後はよろしく」と老中らに交渉を任せようとする。老中たちは仕方なく、万次郎の助けを借りる事にする。
戸板の下のほうから万次郎が押し出される。役人に悪態をつく万次郎。しかし、香山に牢の外に出れることを香山に聞き、大喜び。香山の頬にキスをする。
老中らが小窓から顔を出し、あれこれ指図する。その間に万次郎は裃を着る。香山に「何も言わず、偉そうにしていろ」と言われるが、「アメリカ人の扱いは慣れていますから、任せとおいて下さい。」と意気揚々の万次郎。

1−4−4
再交渉
二人は小さな小舟で士官らに会いに行く。
香山は「偉い人連れて来た。」と万次郎を将軍の次に偉いと紹介する。アメリカ一行の最高司令官ペリーと直接話をさせろと言うとアメリカ側が拒否。万次郎は士官と香山が話し、それぞれが上司と話して交渉するということを約束させる。日本が鎖国令があるので立ち去るように言うと、アメリカは大統領からの手紙を渡しすために来たと言う。アメリカは「日本のしきたりは守るが、上陸して手紙を天皇か、将軍に渡したい」といった。香山は万次郎に「鎖国令があるので上陸させられない。」と言うと、今まで偉い人のつもりで黙っていた万次郎だったが、英語で早口、大声で士官らをけしかけ最後に「駆け足!」と。驚いた士官らは退散する。何がなんだかわからない香山だが、万次郎は上手くいったと上機嫌。ペリーからの指示を聞いた士官(広田)は静かに話し出した。「6日間の猶予を与える。大統領からの親書を手渡すセレモニーを陸上で開いて欲しい。と。そして最後に考付け加えた、「もし願いがかなえられなければ、大砲をすべて陸にむけてぶっ放す。」
驚いた香山と万次郎は逃げ帰る。

1−4−5
大騒ぎ
ナレーターの言うとおり、江戸城は上へ下への大騒ぎ。その様子を大島、園岡、さけもと、岡田、粟田、山田が6枚戸板の上に顔を出したり引っ込めたりして表現する。その騒ぎを聞いてか、戸板の中央が開きたまてが登場する。そして、懐剣を少し抜く。夫が務めに失敗したのだと思い、覚悟を決めたようだった。
ちょっとコメント この場面ではアメリカ士官は英語を話しました。
東京初演時は、原慎一郎さん、樋浦勉さんの役を今拓哉さん、坂本朗さんがそれぞれ演じられました。

牢屋から出られた喜びを万次郎が表すとき、アメリカ公演以降、香山の頬にキスをするという演技が入りました。
東京初演では、たまては第2場で自害してしまうので、ここでの登場はありませんでした。

第5場将軍の寝室

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター
将軍
国本武春 将軍の母 佐山陽規 将軍の妻 堂ノ脇恭子
占い師 岡田誠 神官 越智則英
村上勧次朗
小姓 斎藤桐人
医者 さけもとあきら 腰元 山田麻由    
ミュージカル
ナンバー
菊の花茶(佐山陽規・岡田誠・越智則英・村上勧次朗・斎藤桐人・堂ノ脇恭子・さけもとあきら・山田麻由)
1−5
将軍の寝室
(菊の花茶)

こういう難題が起こった場合、将軍は信頼の置けるはずの人たちを集めて考えるはずなのだが・・・
ナレーターは上手袖に入ってしまうが、将軍の取り巻きを紹介していく。将軍の妻、医者、占い師、神官、小姓、腰元、そしてお琴。どの登場人物もナレーターの紹介の声に応えるように笑顔で下手後方の袖から登場する。最後に満面の笑みを浮かべて登場するのが将軍の母であるが、ナレーターの紹介がない。上手の袖近くで怒って足を踏み鳴らす。するとナレーターが「忘れてはならない将軍の母」と紹介。再び笑顔で舞台上手を前方に歩いてくるが、また途中で怒る。そして、オーケストラ・ピットを見上げて「音」と一言。パーカッションの森岡さんが頭を下げて音を出すと、また笑顔になり舞台後方の将軍の座のそばへ。
そこへ、白い衣装のナレーターが登場。「私が将軍」と。取り巻きたちは「え〜〜〜!」と驚きと不満の声を上げるが、将軍は「なにかもってこ〜〜〜い。」と上機嫌。そして音楽が始まる。


一日目、丑の日。期限まで4日。母は将軍に話をしようとするが、将軍の妻が「ああ、ああ」と奇声を発する。それがおさまると母は話し出す(歌い出す)。「船は浦賀沖にいすわり、手紙(大統領の親書)を受け取るかどうかで上様の心を悩ましています。こんなときは菊の花茶でお心を鎮めましょう。」と。そして、医者が菊の花茶を将軍に飲ませる。まずいのか、将軍は吐き出してしまう。将軍と小姓は舞台後方の格子戸に入って、口直しをしている。こんなときは占い師に聞いてみよう、母が迎えにくる。占い師が舞台中央に。将軍は勿論、全員が占い師の周りを取り巻き、占いの結果を待っている。「星が・・・」と言いながら懐から亀の甲羅と鹿の骨を取り出す。甲羅に骨を投げの「勝利です。」と言う。喜ぶ一同。「壁に蜘蛛が」の言葉に女達は悲鳴を上げるが占い師は「良い兆しです」という。しかし続けて「どちらが勝つのか・・・わからない・・・」の言葉に、将軍は怒り、「いかさま」と叱り付け占い師を下がらせる。


舞台はやや暗転、キャストがあちこちに走り回り、時が過ぎるのを表現。
二日目、寅の日。母が話し出そうとすると、将軍の妻がまた奇声を発する。妻の周りには船形の折り紙がたくさん。舞台上手の水にも浮んでいる。母はその奇声を真似して妻を黙らせる。やきもきする母の横で、将軍は小姓と何やら楽しそうにしている。母は「まだ、船はいます。手紙を受け取るかどうか考えなくては・・・悩んで痩せたようですね」と言って、母は医者に目配せして菊の花茶を用意させる。よほど苦いのか一口で将軍は吐き出そうとする。「こんなときには神官に祈祷をさせましょう」という母。神官の出番だというのに舞台上手やや奥で控えていた神官たちの一人(越智)はうとうとしている。小姓は気がつき、何とか出番の前に間に合った。「黒船は幻です。美しい日本は美しいまま。」と言う割には、頼りなく二人とも前に出たく内容でワン・フレーズずつ回りながら歌っている。そして、赤い紐で船形を作り「船は幻」と言ってそれを崩す。そうだったのかと一同喜ぶ。しかし、黒船は沖にやはりいるのだ。将軍はまた怒り、神官を下がらせる。


舞台はやや暗転、キャストがあちこちに走り回り、時が過ぎるのを表現。
三日目、卯の日。「まだ船はいます。手紙を受け取るかどうか決めなければなりません。」と母。しかし、もう日がないというのに、将軍はのんびりと小姓と戯れる。母はまた菊の花茶を勧める。嫌がる将軍に医者は無理矢理飲ませる。将軍は茶をすぐに吐き出し小姓に介抱されている。そんな将軍に母は「苦しみは続く、その手で父を絞め殺した日から」と。はっとする将軍。小姓の顔色も変わる。母ににらまれた小姓は「神風よ吹け」と必死に祈る。今まで舞台下手後方で琴を奏いていた腰元、折り紙で遊んでいた妻も一緒になって必死に祈る。が、母と医者は淡々としている。祈りも虚しく、神風は吹かず、船は居座っている。将軍は言い出した小姓の労を報いつつも、下がらせる。


舞台はやや暗転、キャストがあちこちに走り回り、時が過ぎるのを表現。
辰の日。腰元は再び琴を奏いている。妻は疲れて眠っている。舞台中央に将軍。その将軍をぴったりと母と医者がはさんで座る。将軍は何かを感じたのか二人を少し遠ざける。「今日は、手紙を受け取るかどうか決めなければなりません。」と母は言っていると将軍はぐったりしてしまう。目を合わせてにっこりする将軍の母と医者。そして腰元も嬉しそうに舞台後方から駆け寄ってくる。。医者は「花は山に散り・・・」と嬉しそうに美しく歌う。が、歌が終わるか終わらないかの時に将軍は起き上がる。あわてて「・・・かな」と嬉しさを隠す医者。こうなっては仕方がない。母は、「長患わいをさせてしまいましたが、手紙を受け取る将軍がいなければ、アメリカも諦めて帰るでしょう。私の考えは最初の日から決まっていました。将軍がいなければすべては解決すると。」将軍はやっと心労に効くと飲まされていた菊の花茶が毒だったことを知る。医者は菊の花茶をさらに飲ませようとするが将軍は拒否。最後の手段をと支持する母に応え、医者は枕で将軍の口をふさいでしまう。今度こそ将軍の最期を見届け、喜びに満ち、母と医者が「花は山に散り・・・」と歌う。腰元も、満面の笑みである。
将軍の妻は目を覚まし、自分しかいないことに気づく。振り向くと誰かが横たわっている。近付き将軍の死を知り、悲鳴をあげて去る。

ちょっとコメント 初演時には、神官らが紐で船形を作るという所作はありませんでした。

第6場老中の屋敷〜浦賀へ

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
香山 本田修司 万次郎 小鈴まさ記 阿部 樋浦勉
老中 越智則英
大島宇三郎
広田勇二
原慎一郎
   
ミュージカル
ナンバー
俳句(本田修司・小鈴まさ記)
1−6−1
屋敷

老中らにアメリカとの交渉結果を尋ねられる香山は、鎖国令を伝えてもアメリカは帰らないし、武力のことも考えると親書を受け取るしかないと答える。怒る老中ら。侍たちは香山と万次郎を捕縛しようとする。香山は慌てて「私に考えがあります。」と言う。聞く耳を持たない感じの老中らだが、阿部は聞こうと言ってくれた。香山は老中達に奇策を伝える。その奇策とは、入江の狭い神奈川に畳を敷き詰め、仮の屋敷を造る。そして、そこで親書を受け取り、アメリカが帰ったら畳まで燃やしてしまう。というものであった。こうすれば、親書は受け取る事が出来、外国人に日本の土を踏ませないという、鎖国令も守れるのである。
この奇策の提案を阿部は評価し、準備を香山に任せる。そして香山を浦賀奉行に取り立てる。香山は昇進を謹んで受け一つの願いを聞いてもらう。それは万次郎を無罪放免として欲しいという事だった。老中らは難色を示したが、阿部はその願いを聞き入れる。老中らは渋い顔で、阿部は満足げに退室する。


1−6−2
道中・香山の家
(俳句)
万次郎は香山に「命の恩人です。」と感謝の意を伝える。すると香山は「万次郎の奇策のおかげで私も助けられたのだ。二人は友だ。」と言う。万次郎は日本の身分制度を思うと香山が漁師の自分を友と言ってくれたことに感銘を受ける。
二人は互いに感謝しつつ、半年振りの帰宅となる浦賀の家へ道を急ぐ。
夜道なので提灯を手に、歩き出す。雨が降ってきた。俳句を作りながら(歌いながら)、照明によって作り出される道を二人は歩いていく。舞台上手奥から出発、前方へ、下手へ。後方へ。そこには戸板が隙間があいて状態で流れていく。その間を香山はどんどん歩いている。万次郎はアメリカに思いを馳せたりして少し遅れる。上手まで来る。斜めに進み舞台センターで「おしまい。」

戸板が家の壁のようになっていて、上手側に玄関が現れる。
香山は万次郎を外に待たせて、家に入る。玄関越しに見えているたまての後姿に昇進したことを告げる。しかし、返事がない。「たまて」と肩に触れると腕の中にはたまての変わり果てた姿があった。ナレーターの泣く声が上手上のから聞こえる。
何も知らない万次郎は舞台下手前方のプールを川に見立て手を洗っている。香山に「奥方様は何と?」と聞きさらに「黒船の来航は日本の歴史始まって以来の素晴らしい出来事だ」と自信たっぷりに言い掛ける。が香山の様子がおかしいので、万次郎は家に入る。そこには、香山の妻たまての生きた姿はなかった。
ちょっとコメント 東京初演時は、原慎一郎さんの役を今拓哉さんが演じられました。

第7場神奈川の店

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 女将 治田敦 女郎 村上勧次朗・堂ノ脇恭子
粟田麗・山田麻由
ミュージカル
ナンバー
ウェルカム・トゥ神奈川(治田敦・村上勧次朗・堂ノ脇恭子・粟田麗・山田麻由)
1−7−1
神奈川の店
(ウェルカム・トゥ
神奈川)
戸板が3枚残っている。
上手からいかにも商売女とわかる女将が登場する。女将は、アメリカ人が来ると言って町が混乱したので商売にならないし、今までいた女郎も怖がって逃げてしまい困ったと歌う。しかし、アメリカ人相手に商売は出来るし、女郎も百姓娘を雇ったと続ける。
そして、困った時には俳句を作って心を慰めていると。そのいくつかの俳句がナレーターによって紹介される。
女郎のいろはを女将から教え込まれる新米女郎達。紐を使ったお遊びの練習も慣れない手つきである。
女将は客席に買って下さい、安くしておくからと頼むが、お客はけちのようだ。女将は勿論高いとのこと。

ちょっとコメント  

第8場ひとり語り

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
剣士 園岡新太郎 女郎 堂ノ脇恭子・粟田麗
山田麻由
広田勇二
原慎一郎
ナレーター 国本武春
1−8−1
ひとり語り
剣士が現れ、自信たっぷりに言う。この日本の窮地に幕府は一番頼れる侍を選び、黒船を追っ払うようにと頼んだ。その侍が自分である、と。さらに剣士は続ける。黒船のいる対岸に白い幕を張り、多くの兵がいるように見せかけた。ところが、アメリカは、その幕をとってみろ、カワイ子ちゃんがいるんだろうと言ったと。
剣士は武士の勇ましさを見せてつけようと幕の外から声を掛けたが返事はない。それでも剣士は、アメリカにばかにされたことが悔しくて、幕を取った。すると、アメリカの言った通りであった。そこには、わずかの武士さえもいなくて、女郎達が鍋を囲んでいたのだった。

1−8−2
ペリーの日記
ナレーターがペリーの日記を読む。
砲撃を思わせるライトの点滅。あんなに自信たっぷりだった剣士も腰を抜かして逃げるにも逃げられないといった様子だ。
ペリーの日記にはついに日本上陸の日が来たとある。
ちょっとコメント 東京初演時は、原慎一郎さんの役を今拓哉さんが演じられました。

第9場応接会場

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 香山 本田修司 阿部 樋浦勉
老中 大島宇三郎 老人 越智則英 少年 斎藤桐人
武士 岡田誠 ペリー 原慎一郎 士官 佐山陽規・治田敦
広田勇二・さけもとあきら
村上勧次朗・小鈴まさ記
(浅野淳一)
ミュージカル
ナンバー
木の上に誰か(越智則英・斎藤桐人・岡田誠)
1−9−1
入室
「親書は受け取ったが、アメリカ人に日本の土を踏ませなかった。」という香山と万次郎の策を実行するために、幕府は神奈川の狭い入り江に畳を敷き詰め、仮の小屋を立てことにしたのだ。香川の指図の元、木の枠に、布をたらした簡単な小屋が建てられる(運ばれてきた)。いかにも急いで用意したという感じの小屋である。阿部たちは、万一の時に備えて床下に武士が忍んでいることを確認する。
ごう音がして花道が伸びて、花道と舞台が一体となる。アメリカのペリー一行が花道からやってくる。先頭は、フルートを持った村上。次がパーカッションの浅野淳一が太鼓をたたきながら続きます。さけもと、ペリーの原、佐山、治田、小鈴が続く。ペリーはひときわ大男となっている。
最後に残った香山は、あたりを見回す。誰も見ていないことを確認しているようだ。

1−9−2
目撃
(木の上に誰か)
ナレーターはこの歴史上重要な会談の資料が日本に残っていないことを嘆く。アメリカに資料はあるが、一方的な資料では、本当のことはわからないと悔やむ。
その声に応えるように、舞台下手のプールにある飛び石に老人が「もし」と、登場する(木の上に誰か)。そして、私はあの木の上に登って、会談の様子を見ていた、という。木に登ろうとするが、登ることは出来ない。老人は「あれは10歳の時だった。」と懐かしそうに言う。すると、少年が老人の背後から飛び出してくる。少年は木に見立てたはしごに軽く登る。少年が見えることを言う。老人がそういうことがあったと応える。
その声が聞こえたのか、先程床下に忍んだ武士が床下から現れる。武士は、話していることは聞こえるが、床があるので見ることは出来ないという。
武士が聞こえることをいう、老人と少年が見たことをいう。3人の話の断片を繋ぎ合わせると、一人の人が屋敷の中を覗いているような説明となる。このことは、大きな歴史が綴られていくが、それは小さなことの積み重ねだ、と歌われる。
そして、老人には、広田、さけもとが持ってきた死を暗示する白い着物が掛けられる。

1−9−3
退席
会談は無事終わり、ペリー一行の村上、佐山、治田、小鈴は花道を登っていく。小屋はすぐに取り壊され、入り江は何事もなかったのように、元通りになる。阿部、老中そして香山はほっとするが・・・
ちょっとコメント アメリカ公演のみ、岡田誠さんの役を山本隆則さんが務められました。
東京初演時はペリーをさけもとあきらさんが演じられ、士官を今拓哉さんが務められました。
 

第10場ライオンダンス

役名 キャスト 役名 キャスト 役名 キャスト
ナレーター 国本武春 ペリー 原慎一郎 士官 広田勇二
さけもとあきら
阿部 樋浦勉 老中 大島宇三郎 香山 本田修司
たまて 春芳 万次郎 小鈴まさ記 老人 越智則英
火消し 佐山陽規 商人 治田敦
岡田誠
剣士 園岡新太郎
百姓 斎藤桐人 飛脚 村上勧次朗 長屋の女房 堂ノ脇恭子
百姓娘 粟田麗 息子 山田麻由
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ライオンダンス
突然、6枚立っていた金の屏風の真ん中2枚がが倒れ、ペリーが登場する。舞台に残っていたナレーターは驚き、花道を駆け上がる。ペリーは何やら楽しそうに踊る。そして、士官らは金屏風に赤いペンキでいたずら書きをする。
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見送り
そのペンキでいたずら書きされた屏風の上手上方に老人とたまてが現れる。白い着物をまとい、そして、たまてが懐剣を喉につきたてると、照明が赤くなる。屏風の間からこわばった表情の香山が登場する。そして、その思いを知る万次郎もまた非常に悔しい思いで、ペリーの一行を見送っているようだった。
その後姿を、日本人は複雑な気持ちで見送っていた。二度と来るな、とこぶしを挙げる者。呆然と見送る者。

そんな中で、ペリーとその一行は大声で「Remember America!!!」と叫びながら、悠然と花道を去っていった。
ちょっとコメント 東京初演時はペリーをさけもとあきらさんが演じられ、士官を今拓哉さんが務められました。

〜休 憩〜